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『クライマーズ・ハイ』横山秀夫 文藝春秋 2003/8 [読書 現代小説]

   評価 ★★★☆☆

<内 容> 出版社商品紹介
85年、御巣鷹山の日航機事故で運命を翻弄された地元新聞記者たちの悲喜こもごも。
上司と部下、親子など人間関係を鋭く描く力作。 

<感 想>

「企業小説」として読むには最高におもしろいです。
新聞記者から見た日航ジャンボ機墜落。
その報道のあり方を巡って組織と対立する「個」としての記者たち。
とりわけ、初めて現場を目の当たりにした神沢が印象的だった。

しかし、衝立岩の登攀シーンって必要でしょうか?
過去と現在が交互に語られているので、だんだん邪魔にすら感じます。
これは「過去=墜落からの一週間」が臨場感に溢れ、秀逸であるのに対し
「現在=登攀」の描写があまりに稚拙すぎるから。
(そもそも17年ぶりでしかもゲレンデしか経験ない中高年が、いきなり衝立岩に
 登れるもんなの!? 挑戦する気持ち、だけでも小説的にはOKだと思う)
冒頭、土合駅の階段から始まるシーンがとても良かっただけに本当に残念です。


これは読んだ方への質問なのですが…
最初、土合駅から衝立岩に向かう途中での安西息子の言葉。
「父さん、やっぱり北へ向かいましたね。」
これってどういう意味なんでしょう??
二ヶ月前に亡くなるまで、安西父は17年間寝たきりだったんですよね?
煙が北へ向かったということなんでしょうか?

どなたか判る方、教えて下さいませ。お願いいたします。


タグ:横山秀夫
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punchigoo

今年の冬に読みました。感想はだいたい同じです。
山岳モノでは、ちょっと古いですが、新田次郎の「栄光の岩壁」が私の中ではベストです。
かめきちさんのサイドバーに載っている殿堂入りでは、火車、風紋・晩鐘、ゴサインタン、永遠の仔などがよろしいかと・・・
by punchigoo (2006-06-23 21:56) 

Sho

こんばんは。
これは読もう読もう・・と思いつつ、未読です。
去年のNHKドラマで見ました。ドラマはすごく緊迫感があってよかったんですけどね。
NHKではそのすぐ後に「氷壁」を連続ドラマにして、「山岳もの続きなのかな?」と思いました。(このドラマは『原案 井上靖 氷壁』となってたくらい、原作とは趣が変わってしまっていました)

ところでかめきちさん、宮部みゆきの「魔術はささやく」お好きじゃないですか?私はすごく好きなのですが。
by Sho (2006-06-24 03:12) 

環虚洞

かめきち様。
誰からも答えが出ない場合、横山さんに手紙をだせば答えてくれるかもしれません。讀賣年鑑等調べますと、住所を確認できると思います。
群馬在住と思います。
横山さんは上毛新聞記者だったので、当方の地元紙と関係の深い方です。「知り合いですので聞いてあげましょう」などと言えたらカッコイイのですが、残念です。
因みに、本書に基づいて放映されたTVを見て、たまたま知り合った上毛新聞元編集委員(87歳)の方に編集現場の様子をお尋ねしたら、現場の様子はアンナモノではないということでした。もっと忙しいそうです。新聞配送車の鍵を隠してしまうということもホントにあるそうです。驚きました。
by 環虚洞 (2006-06-25 14:52) 

akamaru

かめきちさん、こんにちは。
かなり前に読んでしかも本が手元にない・・・ので本屋で2、3頁こっそり立ち読みしてきました~(^^;
山については素人なので、表現の正誤はわかりません。そんな私の「と思う」で「多分」で「気がする」なので、見当違いでしたらすみません。

「北へ向かった」のは、やはり「煙」だと思います。17年間植物人間状態のまま亡くなって、火葬されてやっと身も軽く自由になって、前橋(葬儀場)から北(衝立岩)に向かったということでしょう・・・「先に登って待っているぞ」という感じで・・・あのセリフは葬儀場でだと・・・
あれ?衝立岩へ行く途中?もいっかい、立ち読みしてこなきゃ。
「クライマーズ・ハイ」は「気持ちが高揚し興奮状態が極限まで達して恐怖感さえ麻痺してしまう事」だそうですが、交互に描かれた過去の話も、大きな事件、分刻みで追われる時間、人間関係、職場の内情、様々な駆け引き・・・と大きな流れや困難に巻き込まれ極限状態に追い込まれているうちに、冷静に判断する思考が麻痺していく・・・という意味で「クライマーズ・ハイ」だったのではないかと。私はあの過去(新聞社)と現在(岩登り)が交互に出てくるからこそ、題名が生きてきているような気がします。
事件の後、主人公は植物人間状態の安西氏の代わりに安西息子に山を教えた(本当の息子とはうまくいかないまま)というストーリーだったと思うので、想いが残る衝立岩には向かえなかったけど、他の山はいっていたんだと思ってましたが・・・あれ?
それで17年間止まっていた時間から1歩踏み出す為に乗り越えるべきものが衝立岩・・・そして最後は、実は父をすでに許していた息子の気持ちも知ることもできて大ハッピーエンド!だったような・・・
えっとしつこいですが、全然見当はずれだったらごめんなさい。

私の中では、自衛隊が女の子を抱きかかえている記事の箇所が一番強烈で印象的でした。ぼろぼろ泣きました。
by akamaru (2006-06-25 21:11) 

かめきち

punchigooサマ、ありがとうございます~。
新田次郎の山岳モノは傑作が多いですよね。
私は『八甲田山死の彷徨』や『芙蓉の人』なんかも好きです。
後者はもし富士山に登られる機会があれば、ゼヒご一読を!
punchigooサマの「殿堂入り」も御サイトでおいおい拝見できたら
うれしいです^^
by かめきち (2006-06-26 14:59) 

かめきち

shoサマ、ようこそいらっしゃいませ~。
NHKドラマは見逃したんですよ、『氷壁』も。
もっとちゃんとドラマチェックをせねば(`・ω・´)
両方とも、宅レンで予約中です。楽しみ~ワクワク。
宮部みゆき作品でワタシが“ハズした”と思ったのはこれまで
『誰か』だけです(『ブレイブストーリー』は読んでません)
あとはどれもおもしろかったです。内容が全部は思い出せないけど。
そろそろ彼女の作品も読み返してみようかな~。
もちろん『魔術はささやく』をまっさきに♪デス。
by かめきち (2006-06-26 15:02) 

かめきち

閑居堂サマ、ありがとうございます~。
「作家に直接尋ねる」おぉそんな手段もあったのですね。
でもそうするには、少なくともあと5回は読み返してからでないと
作者に対して失礼な気がします。
でもすでに本は返却してしまったし、買ってまで読み返す気力も無いしで
横山氏に手紙を差し上げることはなさそうです(こら)

本当に、新聞配送車の鍵を隠してしまうとは!
元編集員の方のお話は迫力がありそうですね。
元・上毛新聞記者の横山氏が描く“御巣鷹山”も本当に
迫力があって秀逸でした。
それだけに登攀シーンの稚拙さが目についてしまって…残念。
by かめきち (2006-06-26 15:02) 

かめきち

akamaruサマ、ようこそいらっしゃいませ~。
こんなしょむない質問に答えて下さって有難うございます。
やはり「煙」ですよね。
「たなびいた」とかなんとかひとこと、そう書いてくれたらなぁ。
途中まで「安西父、最後の謎の行動」と「北」が何か関係あるのかなと推測してました。

“クライマーズ・ハイ”に対する見解はワタシもほぼ同じです。
(ワタシはakamaruさんほどうまく言葉にできませんが^^;)
現在と過去を交互に語ることは、それらが同じくらい秀逸に描かれているのであれば
素晴らしい効果があったろうと思います。でもハンバーグがどれだけ美味しくても、
それを挟むバンズがまずかったら、ハンバーガー全体がおいしくない。
だったらハンバーグだけで喰わせてくれ、と思ったわけです(何のこっちゃ)

これはワタシが山好きだから、登攀シーンの描写に点が辛くなってしまうのでしょう。
例えば『亡国のイージス』を読んだ方のレビューに
「潜水艦の描き方がなっとらん!」とあれば
「まぁまぁ、フィクションなんですから細かいことはいいじゃないですか~」と
思ったワタシですが、いや、自分の好きなモノには拘ってしまうのですね。
反省、反省。
by かめきち (2006-06-26 15:42) 

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